時計屋の大将






風呂屋は人生の機微もつつみこんでくれる。近所の風呂屋のサウナで毎日同じ時刻にいっしょになるお方がいる。どちらともなく挨拶を交わすようになったが、名前も住所も知らない。わかっているのは、その人が時計屋を営んでいるという事くらい。重宝なもので時計の修理などお願いするのであるが、代金の受け渡しはもちろん脱衣場である。
仕事の都合でしばらく時間帯がずれたりすると、「どうしてたん?毎日会えへんかったら寂しいやん。」と声がかかる。せっせと“時計屋の大将”に時間を合わせて風呂屋へ通うこととなる。風呂屋が好き、サウナが好きというだけで打ち解けあえるものがあり、何も知らないからこそ安心できるものがあるとも思う。仕事がうまくいかず落ち込んでいたりすると「そういう時もあるわいなぁ。そのうちええこともあるでぇ。」と真剣な表情が返ってくる。目からも“あせ”が流れた。



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