風呂屋とチューインガム


  

 風呂屋とチューインガムは相性が悪い。あれはいつ頃の事故だったのだろうか。ガムを噛んだまま風呂屋へ行ったのだから、きっと小学校の遠足か何かのあとだったのだろう。時期は記憶にないが、悲惨な光景は鮮明に覚えている。
 遠足の疲れをいやすべくゆったりと湯舟につかり、十分に体をあたためて、おもむろに洗い場へ。おそらく、お風呂屋さんの洗い場にシャワーというものが備え付けられてまもない頃だったと思う。隣の人にシャワーの湯が掛からないよう、十分に頭を
下げる。子供にとって慣れないシャワーは呼吸のタイミングが難しい。鼻に湯が入らないよう、おのずと口で呼吸することになってしまう。石鹸で洗った頭をシャワーですすいでいると、手に何かがベチョベチョと引っかかる。何かヘン!おかしい!と思いつつも口は息をするため、あけっぱなし。シャワーを止めて唖然、口の中にガムはほとんど残っていない。体がぬくいのと浴室の温度が高いのとで、ガムは十分に軟度を増し、広がり、やっかいな粘着を引きおこしながら、シャワーの湯と共に顔から頭へと。鏡を見れば口から上はベトベト。それからが大変だった。髪に付いたガムはつまんではがそうとすれば伸び、移動し、さらなる広がりを見せ難儀と知った。



 風呂屋にガムは噛んで行くべからず。そういえば最近の子供ではあまり見かけないが、同じような経験があってみんな知っているのだろうか?
 あれからガムが嫌いになった。せめてもの救いは、頭が丸刈りであったこととふうせんガムでなかったこと。その夜は寝苦しかった。



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